2014年10月2日木曜日

太陽系時空間音楽

 

10日ほど前、インドのダージリン地方にある茶農園で収穫してつくられた紅茶が、インド史上最高値で取引された、という記事をみました。価格は1kgあたり1850ドル(約20万円)。「ザ・リッツ・カールトン東京」では、この紅茶がポット1杯45ドル(約4900円)で提供されるそうです。

一番興味深かったのは、この茶葉が高く売れた理由が「宇宙」に関連している、という点でした。茶園の園主によると「6月の夏至の直前の満月の夜、午前12時01分から午前3時までの間に、およそ500人の女性が一斉に茶葉を摘んだ」「満月の晩に摘み取られた茶葉は、特別に優れた茶になる。特に、今年の6月13日の満月の夜は、天体の配置が108年に一度しか訪れないユニークなものだった」。(The Huffington Post 2014年09月22日)


◎宇宙のリズムで育てる

この茶農園では、独特な有機農法でお茶を栽培しているそうです。自然との共生を基礎に、天体の動きを利用しながら最適なタイミングで動植物などからつくられる特別な堆肥を土にすきこみ、また最適なタイミングで収穫をするというもの。

新しいコンセプトのようにみえる“宇宙的有機農法”ですが、特別めずらしいものではありません。農家にはもともと経験的に積み重ねられてきた知恵があり、日々の農作業と暮らしの中には経験の結果として、宇宙と調和したトキ=暦が自然な形で伝承されてきました。日本では、奈良時代に中国から太陰太陽暦が導入されるよりもはるか昔から自然暦があって、いわば宇宙のリズムで様々な兆しをつかみながら衣食住が営まれていました。江戸時代末期には幕府公認のものだけでも450万部の暦が出版されていて、これほど暦が普及していた国は世界でも珍しいといいます。おそらく、中国から輸入された暦と古来の自然暦に、積み重ねられてきた知恵をうまく組み合わせながら、宇宙のリズムと調和したお茶や野菜をつくっていたことでしょう。


◎古くて新しい暦

最近、二十四節気や七十二候を見直す動きとともに、暦の本を数多くみかけます。自分のライフスタイルに合わせた暦を使う人も増えているようです。ちなみに、私は花や野菜を本格的に育てるようになったことがきっかけで、5年位前からグレゴリオ暦とは違う暦も生活に取り入れるようになりました。次第に、以前よりも日々の月の満ち欠けや「節目」に心が及ぶようになって、自然の「兆し」や風物の「名残り」を意識するようになっただけでなく、自分の新たな時間軸を手に入れたような感覚があります。



◎遥かなトキを、俯瞰する

ところで、最近出逢った暦に「太陽系時空間地図 地球暦」(ちきゅうれき)というものがあります。これは、壮大な太陽系の時空間を1兆分の1に縮尺、A1のポスターサイズで表したものです。太陽を真ん中に、その周囲をまわる太陽系惑星の軌道を円で描いてある、まるいカレンダー。太陽系を俯瞰して眺めることができます。地球の軌道を一周するとちょうど一年です。日々動いている星々と自分(地球)の、変化する位置関係を眺めながら、いまここにいる自分と宇宙はつながっていて、リズムを共にしているという実感が湧きます。それにしてもA1の1兆倍って・・夜空の星を見上げながらため息をついてしまうほどのスケールですが、この時空間を部屋で気軽に体感できるというのがとても魅力的です。

実は、この「地球暦」の時空間地図を音楽にしたものがあります。その名も「太陽系時空間音楽」。

 

太陽系時空間音楽2014


◎惑星が音を奏でる

この音楽をひと言でいうと、太陽系の一年間を譜面に見立て、天文現象を音楽にして奏でたものです。一年を1/10800に縮尺して、1秒=3時間、8秒=1日の速度であらわし、48分40秒で地球の一年の運行が一曲の音楽として再現されます。その音楽が奏でるリズムはヒトの心拍数や呼吸に近い感覚で、地球の動きをカラダで感じられるようになっています。さてその音楽は、いったいどんな音でかたちづくられているのでしょうか?


◎深く、遥かな音

一日の区切りは鈴の“チリーン”の音。また、二十四節気の節目や月の満ち欠けは、太鼓やカネの音で印象的に表現されています。特に楽しみなのが、惑星同士が出会うタイミングに聞こえる、低周波の倍音がうなる音です。少々マニアックなのですが、太陽系の各惑星の平均公転周期が周波数の特性で再現されているのだそう。言葉だけで説明するとちょっと難しそうなのですが、カラダの内側にまで伝わる音の震えに身を任せていると、変化が少しずつ感じられます。


◎2014年の音宇宙

「太陽系時空間音楽」は、2012年以来、毎年発表されています。今年の初夏に発売された「太陽系時空間音楽 OP-004 2014」は、2014年3月21日の春分からの一年間が一つの楽曲になっています。実際のところ、毎年惑星の巡りあうタイミング(太陽系時空間に描かれる地図=譜面)が違うので、その年ならではの音楽ができあがります。2014年の音の特徴は、惑星に派手な動きがないこと。「内に入っていくような雰囲気の時空間」が天文現象の譜面に描かれているといいます。これから次第に惑星の動きが変化しながらムードが高まっていき、太陽と月、そして地球が滅多にない巡り合いをするのが、東京オリンピック開催年の2020年なのだそうです。どんな譜面、どんな音宇宙が描かれるのか楽しみです。

頭のなかを整理したいとき、ひと月の始まりでも終わりでもある新月の日、旅先で自分をリセットするときなどに聴くのがおすすめです。車の中で流してみると、宇宙旅行気分を味わえるかもしれません。

 

[おすすめ]

 ◎「太陽系時空間音楽 OP-004 2014」deepsheeprecords
 ・CD(Amazon)
 ・視聴(SoundCloud)

 ◎太陽系時空間地図 地球暦HP
  
 ◎「太陽系時空間地図 地球暦 2014年度版」HELIOCOMPASS(Amazon)
  太陽系を1兆分の1に縮尺してA1サイズに収められた時空間地図。毎日カレンダーの日付に書かれた数字と曜日を追って生活をしていると、年のはじめから年末に向かってまっすぐに時間が流れていくように思えますが、実際のところ地球は丸く、年月も一日もまるい円を描いて回っています。私たちも星々と共にめぐる宇宙の一部であることを自然に理解できるのが、この地図の最大の特徴。円環する永遠のトキを感じながら過去・現在・未来を考える暦です。ちなみに「太陽系時空間音楽」は、この地球暦からはじまった“feel art helios”というアートプロジェクトの一環で生まれた作品です。

 ◎地球暦facebookページ
  二十四節気や月の満ち欠け、星々の巡り合いなどの「節目」ごとに、そこに秘められた本質的な意味を知ることができます。節目にふと立ち止まって考える、あるいは考えない時間を与えてくれます。

 ◎今後のイベントの予定
  2014年10月25日(土)-11月2日(日)
  「あそび feel art helios #4 太陽系時空間地図 地球暦」
  場所:gallery feel art zero(名古屋)
  地球暦のトークイベントや宇宙座談会の他、音と造形、映像を組み合わせて生まれる“宇宙の音風景”を楽しむライブなど、盛りだくさんの催しです。詳しくはgallery feel art zeroのHPからご覧ください。*イベントの参加は要予約です


[写真]

 ◎「太陽系時空間音楽 OP-004 2014」のCDジャケットより


[参考]

 ◎「和暦日々是好日」LUNAWORKS
  

[関連記事]

 ◎「整える音楽」
  「太陽系時空間音楽」で真っ先に思い出したのが、東洋的な宇宙観を音形にした雅楽です。音とカラダ、方角、惑星や季節など、森羅万象とのつながりをあらわす五行思想をご紹介しています。

 ◎「リズムの本質」
  「リズムの喜びはどこからくるのか」宇宙が奏でる永遠のリズムを感じながらお読みください。

 ◎「永遠を刻む」
  円環する永遠のトキを刻むインド音楽をご紹介しています。

 ◎「深呼吸と音楽」
  海のリズムと、かつて魚だったヒトのつながり、そして宇宙との切っても切れない関係について書いています。

0 件のコメント:

コメントを投稿