2014年4月5日土曜日

整える音楽

NO MUSIC, NO LIFE. はタワーレコードのコーポレート・ボイスとしてとても有名なフレーズですが、私の毎日の暮らしも、音楽なしには考えられません。

様々なジャンルの音楽を聴くのですが、頻度の高いもののひとつは雅楽です。
雅楽を日常生活で聴く人はあまり多くないようで、普段聴く音楽に挙げると少し驚かれたりするのですが、おすすめです。個人的には龍笛と琵琶の組み合わせや、笙のソロや小編成が好きです。

雅楽に興味を持っていくつか関連の本を覗くと必ず、何度も出てくる書名があります。それは「管絃音義」というものです。「管絃音義」は1185年に完成、涼金という僧によって書かれた雅楽音楽理論で、中国の「呂氏春秋」という思想百科事典の知識をベースに、音楽を中心に据えた五行思想・宇宙論を壮大に論じています。1000年近く経った今、雅楽演奏や研究にとって、いわゆる「外せない」書物です。原文を読んでみると、これがとても面白いのです。

五行相生図

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこでせっかくなので、触りをご紹介します。出だしから核心的かつ豪快です。*原文の雰囲気を尊重して格調高いムードはそのままに、なるべくやわらかな訳を付けてみました

夫管絃者萬物之祖也。籠天地於絲竹之間。和陰陽於律呂之裏。
訳:そもそも管絃はあらゆるもののはじめである。宇宙を絃楽器と管楽器の間につつみこみ、陰陽を音階の内に調和する。

 

後半ではこんなことも書かれています。

一切音楽。皆是為治国治民也。故昔聖人出世。作管作絃。
訳:すべての音楽はみな、国を治め、民を治める為にある。そのためにかつて聖人がこの世に現れ、管楽器をつくり、絃楽器をつくった。

 

さらに。

五音即属五臓。故還以五音治五臓。
訳:五音は五臓にそのまま繋がっている。それゆえにまた五音によって五臓を整える。

 

音楽って一体何者なのだろう!?とワクワクしてきます。

五音とか五臓、という言葉が出てきましたが、雅楽には5つの「調子」があって、それぞれを五行思想に基づいて分類することができるといいます。以下は「管絃音義」の記述から書き出したもの。朝、昼、夕、夜は「管絃音義」の本文に出ていませんが、五行の基本的な項目なので付け足しました。

 双調:春、東方、朝、木音、肝臓、眼、青色、歳星。
 黄鐘調:夏、南方、昼、火音、心臓、舌、赤色、熒惑星。
 壱越調:土用、中央、土音、脾臓、身肉、黄色、鎮星。
 平調:秋、西方、夕、金音、肺臓、鼻、白色、太白星。
 盤渉調:冬、北方、夜、水音、腎臓、耳、黒色、辰星。

 

音がカラダや惑星や季節など、あらゆるものとつながっている・・時間と空間を整えている、というのですね。音楽の力は、ただものではないみたいです。

 

静かな夜に、お酒を飲みながら。窓の外の、星を見ながら。
宇宙と一体になって、音楽の中で全てが調和する感覚を思い浮かべながら、雅楽を楽しんでみては如何でしょう?


[おすすめのアルバム]

 Toshio Hosokawa: Deep Silence / Gagaku(MP3)

 Toshio Hosokawa: Deep Silence / Gagaku(CD)

 このアルバムでは、古典雅楽とコンテンポラリー音楽を交互に堪能することができます。
 笙とアコーディオンの組み合わせがとても素敵です。

[参考書]

 群書類従第拾貳輯 塙保己一編 巻第341管絃部1「管絃音義」 経済雑誌社
 *近代デジタルライブラリーで閲覧可能

[文中の写真]
 五行相生図并相尅図(群書類従第拾貳輯 塙保己一編 巻第341管絃部1「管絃音義」経済雑誌社より)

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