愛知県陶磁美術館へ行きました。
企画展のテーマは「モダニズムと民藝 北欧のやきもの:1950's-1970’s」で、デンマーク、スウェーデン、ノルウェー、フィンランドの焼きものがまとめて160点展示されていました。
これまで私は、北欧のやきものを美術館などで観ようとは考えもしませんでした。日常のやきものであるし、「鑑賞」の対象と思っていなかったのです。しかし、行ってみると北欧モダン陶磁の背景と展開を面白く知ることができました。
最も興味深かったことは、北欧では「産業」としてのやきものと「美術工芸」としてのやきものが、決して切り離すことの出来ない両輪として製陶所に大切にされてきたことです。ロイヤル・コペンハーゲン、アラビア製陶所、グスタフスベリ製陶所といった各製陶所は、工房の中に美術工芸部門を設置し、そこでは東洋の古い陶磁作品の形状、釉薬の研究や、実験的作品の制作が営まれ、そこから生まれた発想が日常品としての陶器制作に活かされていました。

例えばニルス・トーソンの紫紅釉碗(ロイヤル・コペンハーゲン *1つ目の画像、上から2番目の紫色碗)、ベルント・フリーベリのミニチュア陶器(グスタフスベリ製陶所 *2つ目の画像、左上写真の小瓶群)などを見ていると非常に東洋的で、いにしえの中国陶磁に紛れていても、直ぐには判らないかもしれません。

個人的にお気に入りなのはアクセル・サルトのヴェース(ロイヤル・コペンハーゲン *2つ目の画像、写真二段目中央)をはじめとした美術工芸作品群。土、草、木の実や樹木、葉っぱがモチーフになった塊状の瓶は、野性的な魅力に満ちていました。原料を土とするやきもので森の土を表現する、というのは妙な感じもしますが、確かに見事にかたちになっていたのでした。
東洋から多くを学んだ北欧のやきものですが、その後、今度は日本人の注目を集めました。柳宗悦や濱田庄司などの民藝運動家が北欧の陶芸家やデザイナーたちと交流を重ねて、「用と美」を兼ね備えた産業製品の可能性を追求していったのです。
半世紀前にも北欧ブームがあったのですね。
*画像は愛知県陶磁美術館HPのサービスを利用してダウンロードしたものです
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